キス、涙々。










「おは、よう。……なんでいんの?」

「ハギくんとゆっくり話せると思って」

「それって公私混同」

「……まったくその通りですね」


反論するつもりもない。


あいかわらずハギくんは服装を違反していた。

それをぽつりぽつりと指導しながら、わたしはなにから話そうかと考える。





「会いたかったの」


最初に出たのはそれだった。


モヤモヤとともに口から飛び出した、わがままな気持ち。



「最近ぜんぜん話せてなかったし、というか避けられてた、と、思いますし……」


ここまでハギくんのことで頭をいっぱいにさせる日が来るとは思わなかった。



意地悪で、変人で、いつまでたっても制服を直さない。


なるべく関わらないでおこうと誓っていたあの頃のわたしはもういない。


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