キス、涙々。


……一時期、ぜんぶ投げ出したくなったときがあってさ。


高校に入学したての頃かな。


うち、生活保護受けてんの。


だけど母さんはあんなだし、俺がバイトしないと生活回らなくて。

わかってんのにあのときはバイトすらも億劫だった。


もうめちゃくちゃに荒れたよね、よく持ち直したなって思えるくらい。


そんな廃人が改心したのはふたつ理由があって。


ひとつは言わない。めちゃくちゃ個人的な理由だし。本人ぜんぜん気づいてないし。


もうひとつは、これ以上家族を壊したくなかったから。




……高校卒業したら働くつもり。


本当は大学がどんなところか、行ってみたい気持ちはあるけど。


そんなの、絶対言えないでしょ。


うちにそんな大金はないし、第一あの人をひとりにはできない。


俺しか残ってないんだよ、母さんは。

父さんを投影できるのはもう俺しかいないんだよ。


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