キス、涙々。


立ちあがろうとするヤオの身体を、抱き寄せた。

その柔らかく優しい色をした髪がふわりと顔にかかる。



「ハギくん……」


ぎゅっと腕に力をこめる。

反応するように、華奢な身体がぴくりと強張った。



「自分のことだけ、考えたらいいんでしょ」


だったら俺はヤオだけでいい。

ヤオさえ傍にいてくれたら、それだけで……



「今日は帰りたくない」

「うん、……うん」


最初はどうしたらいいかわからないように身を固くしていたヤオも、そのうちすっと肩の力を抜いて俺の背中に手を回す。


心地のよい振動がいつまでも、いつまでも。

俺の中に吸いこまれて、溶けていく。




ふたりで逃げたいって言ったらどうする。

問うと、ヤオはすこし考えるそぶりをみせて笑った。



どうせならあたたかいところに行きたい、と。



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