キス、涙々。







学校から出るとすでに日は暮れかけていた。


ふたり並んで通学路を歩きながら、どこに行こうかと話し合う。

そんなときだった。





「おかえり」

「え?」


目の前に、綺麗な女の人が立っていたのは。



わたしは首をかしげるけど、ハギくんの足がぴたりと止まる。



「えっと、」

「……俺の母さん」


固い声でそう告げたハギくんに、わたしはもう一度女の人を見る。



この人がハギくんの……


まじまじと見過ぎてしまったかもしれない。


あわてて頭を下げて挨拶しようとしたけれど、女の人はまるでハギくんしか見えてないようで。

まっすぐ視線を向けながら、笑顔でこちらに手を差し出してきた。



「遅かったから心配したわ。こんなところにいたのね」


そうしてわたしは、次の言葉に現実を突きつけられることになる。







「ツバキくん」


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