キス、涙々。
*
学校から出るとすでに日は暮れかけていた。
ふたり並んで通学路を歩きながら、どこに行こうかと話し合う。
そんなときだった。
「おかえり」
「え?」
目の前に、綺麗な女の人が立っていたのは。
わたしは首をかしげるけど、ハギくんの足がぴたりと止まる。
「えっと、」
「……俺の母さん」
固い声でそう告げたハギくんに、わたしはもう一度女の人を見る。
この人がハギくんの……
まじまじと見過ぎてしまったかもしれない。
あわてて頭を下げて挨拶しようとしたけれど、女の人はまるでハギくんしか見えてないようで。
まっすぐ視線を向けながら、笑顔でこちらに手を差し出してきた。
「遅かったから心配したわ。こんなところにいたのね」
そうしてわたしは、次の言葉に現実を突きつけられることになる。
「ツバキくん」