キス、涙々。


なにかを言おうとしたら、その前にハギくんが離れていった。



「帰ろうか」

「いや、ツバキくん……」

「……父さんはもういない。俺は父さんと母さんの子どもの、さくらなんだよ。……帰ろう。家に帰ろう、母さん」




去っていくふたつの背中をいつまでも見つめる。


伸びた影は重なるように交わっているのに、ふたりの距離は不自然に空いていた。

まだ受け入れられない。


そんな現実が、想いが。


ひしひしと伝わってくるのを感じた。



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