キス、涙々。









「や!ひさしぶりだねヤオ!」

「えっと……どちら様ですか?」

「それ最新のボケ?俺だよ、俺俺」


そちらこそ新手のオレオレ詐欺ですか?

休日、お使いに行く途中だった。



「あの、これってナンパですか」

「そうね、ナンパだね」

「命だけは勘弁してください……」

「ヤオは俺のことをなんだと思ってるの?てかいつまで続ける気?その三文芝居」


「……だって」



いきなりなんだもん。



ちらりと目の前の人物に目をむける。

そこに立っていたのは紛れもなくハギくんだった。


いつも通りのにこにこ笑顔は、むりして作っているようでもない。

……わたしが見破れないだけかもしれないけど。



「ヤオ、いまからちょっと時間ある?」

「え?ある、けど……」


ならさ、とまるで最初から決めていたかのように告げられる。






「うちにお線香、あげにきてよ」


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