キス、涙々。






『わたしのポポロくん、返してっ……!』



幼い頃から身体も、勇気も人一倍ちっちゃかった。


そんなんだからその男の子に目を付けられたんだと思う。

まるでガキ大将のような体躯をして、わたしをつかみ押し倒す男の子。


もみくちゃにされたあと、あげくの果てにはポポロくんのスコップを持ち逃げされた。




わたしはぼろぼろ泣きながら男の子のあとを追った。


そうして気づいたときには知らないところまで来ていた。


もちろん男の子も見失ってしまって、ひとり途方に暮れるわたし。


知らない土地にきた不安、恐怖、そしてポポロくんを持ってかれた哀しみが一気に押し寄せてきて。





『っ、うぁ、わぁぁん……!』





大きな声でわんわん泣いても、誰も助けてくれなかった。


みんなが見て見ぬフリをして遠ざかっていくなかで、





『大丈夫?』



助けてくれたのが犬のおまわりさんだった。




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