キス、涙々。




「ハギくん、この人……」

「そう。これが俺の父さん」


写真の中にいる男の人の容姿はハギくんと全然似てなかった。

警察の制服に身を包んで、どこか固く表情を引き締めている。


それなのにどこか優しさや温かみに似たものを感じる。

この人は、ハギくんとそっくりの瞳をしていた。



……ハギくんのお父さんだ。


そうして、この人は。




「あの、ましろさん……よね?」


おずおずと仏間に顔を出したのは、ハギくんのお母さん。

この前会ったときと見た目は変わらないはずなのに、雰囲気がまったく違って見えた。


髪を後ろで一つにまとめたお母さんは、手になにかを持っている。



「いつか、あの人から話を聞いたことがあった。ごめんねましろさん、中身見ちゃったけど……どこも壊したり破いたりしてないから」


どこかぼんやりとしたまま、手渡されたそれを受け取った。


緑と赤のクリスマス柄の包みはまだすこし時期がはやい。

何年も前から用意されていたように、両手に収まるその袋はちょっぴり古びていた。


となりに座るハギくんをちらりと見やる。

ハギくんがうなずいてくれたので、わたしはおそるおそる袋の中に手を入れる。


なにか固いものと、紙のようなものが指に触れた。


先に紙のようなものを取り出すと、それは一枚のメッセージカードだった。


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