キス、涙々。


しばらくして落ち着いたわたしに、ハギくんのお母さん──奏絵(かなえ)さんがお茶を入れてくれた。



「す、すみません。人様の家でみっともなく泣いちゃって……」

「いいのよ。あの人も、あなたに会えてよかったはずだから」


奏絵さんは申し訳なさそうに目を伏せながら続けた。



「そして、私も……あの子も」


ハギくんと奏絵さんはたくさん話し合ったのだと、教えてくれた。

お互いに思っていたことをぶつけあって、言いたかったことをすべて話して。



「さくら。戸棚にある大福、取ってきて」

「俺あれもう飽きたんだけど、母さん」

「あら、ましろさんは飽きてないわよね」


< 238 / 253 >

この作品をシェア

pagetop