キス、涙々。
「さいあく。またやっちゃったよ、ネイルこれ」
「うわーかわいそ。今回のすごい可愛かったのに」
だるそうに歩いてきた女の子たちが、目の前でそんな会話をくり広げる。
お願いしまーす、と気の抜けたあいさつをいただいた。
「お願いします。あの、それって今すぐ落とせたり……」
ぎろりと睨まれてわたしは内心ビビりながら付け足した。
「しませんよね……明日までに落として、指導課の先生に見せてくださいね」
「……あのさぁ」
バインダーの用紙に記入していると、不機嫌そうに声をかけられる。
顔をあげると可愛く縁取られたネイルをいじりながら、
「それ、なんでいつもチェックなの」
「え」
一瞬、責められているのかと思った。
だけどどうやら違うらしく、むすりとしたままの女の子は目が合うと顔をそらした。
「ほかの人ら、容赦なく×にすんの。でもあんただけは、絶対、×でつけないよね」
そこまで言ってなぜか顔を赤くした女の子は、友だちを急かしてさっさと校舎のなかに入っていこうとする。
わたしはあわててその後ろ姿に声をかけた。