キス、涙々。
「とはいえ奨学金を使わなきゃ厳しいんだけどね。こつこつバイトしてゆっくり返していくよ」
「そう、なんだ。うれしい……!」
たぶん奏絵さんにも相談して、そう結論を出したんだろう。
わたしはまるで自分のことのように嬉しくなる。
「ヤオのおかげだよ」
「ううん、わたしはなにも……というか、」
「ん?」
「あのときハギくん言ったよね。わたしがハギくんに勇気をあげたって」
本当はあのときに返していたかったんだけど、いまからでも遅くはないと思う。
ぎゅっとハギくんの袖を掴むようにしながら、笑いかけた。
「そんなの、わたしだって同じ……ハギくんがわたしに勇気をくれたんだよ」
あと一歩、自分にはどこか踏み出せないところがあった。
そんなわたしの背中を優しく押してくれたのが、ハギくんだったんだ。