キス、涙々。
「ハギくんは、」
「うん」
「わたしなんかの、どこを好きになってくれたの」
「ヤオは“なんか”じゃないよ」
頬をすべる涙を指ですくわれる。
すこし考えるそぶりをしたあと、ハギくんはにこりと笑った。
「……泣き顔?」
やっぱりそこなんだと肩をがっくり落とす。
嬉しいようで嬉しくない。
「あと笑ってる顔も好きだし、怒ってる顔も好き。怒ってるとこ、あんま見たことないけど。朝は眠たそーにしてるとことか、ヤオだけ用紙に記入するときチェックしてんのも好き」
「もっ、もういい!もういいです!」
「そう?まだいっぱいあるけど」
「おなかいっぱい……」
「少食だね」
顔から湯気が出そうなわたしとは違って、ハギくんは涼しげな佇まい。
「でも……やっぱりヤオの泣いてる顔がいちばん好き。可愛い」
「っ、ん……」
一向に止まらない涙にキスをされる。