キス、涙々。


「ハギくんは、」

「うん」

「わたしなんかの、どこを好きになってくれたの」

「ヤオは“なんか”じゃないよ」


頬をすべる涙を指ですくわれる。

すこし考えるそぶりをしたあと、ハギくんはにこりと笑った。



「……泣き顔?」


やっぱりそこなんだと肩をがっくり落とす。

嬉しいようで嬉しくない。



「あと笑ってる顔も好きだし、怒ってる顔も好き。怒ってるとこ、あんま見たことないけど。朝は眠たそーにしてるとことか、ヤオだけ用紙に記入するときチェックしてんのも好き」


「もっ、もういい!もういいです!」

「そう?まだいっぱいあるけど」

「おなかいっぱい……」

「少食だね」


顔から湯気が出そうなわたしとは違って、ハギくんは涼しげな佇まい。



「でも……やっぱりヤオの泣いてる顔がいちばん好き。可愛い」

「っ、ん……」


一向に止まらない涙にキスをされる。


< 251 / 253 >

この作品をシェア

pagetop