キス、涙々。


「あ、えっと……こ、こんにちは?」

「声はあんま似てねーんだ。でも顔かわい!」



そんなに?ってくらい、わたしの顔をみて興奮している。


そして男子の視線がするすると下がっていき、まるでなめ回すように全身をみられるから。

さすがにいい気持ちにはならなくて、身を固くする。




……ああ、この人もそうなんだ。



ホンモノとか、声とか、顔とか。

初対面の人たちがこぞって口にする“それ”に、ハギくんのネクタイを持っていることを忘れたまま手にぐっと力が入った。






「……おい」

「え、なに怒ってんだよさくら」



するりとわたしの手首をなにかが包む。

それはハギくんの手だった。


こっちからは見えないけど、ハギくんの顔を見た男子はぎょっとしてたじろいでいた。




「そ、そんな怖い顔すんなよぉ……」


さっきまでの元気はどこへやら。

弱々しい男子の言葉にびっくりしたのは、わたし。


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