キス、涙々。
ハギくんって怖い顔できるの……?
毎日のように顔を合わせているのに、彼の怒ったところなんてみたことがなかった。
いつも楽しそうににこにこ笑ってる、から。
気になってわたしもその顔を確認しようとしたけど、のぞき込むより先に手を引かれて。
「わ、えっ……ちょ、ハギくんっ?」
ハギくんは一度もふりかえることはなくどんどん廊下をすすんでいく。
手をつかまれているから、わたしもそれに続くしかない。
渡しそびれたネクタイは、ひらひら、手のなかではためいていたのだった。