キス、涙々。
「あの、ありがとうハギくん。助けてくれて」
「え?助けたつもりはないけど。まあ、どういたしまして」
振り返らないハギくんの背中ばかりを見つめながら、うしろをついて歩く。
まだ怖い顔してるのかな。
想像してみようにも本当に見たことがなかったから、頭にえがくこともできなかった。
そんなハギくんが怒るなんてよっぽどだ。
一体何に対して怒ったんだろう。
もしかして……わたしのため?
や、さすがにないか。
おごるにもほどがある。
助けたつもりはないって言ってたし
きっと、下敷きにされたことに怒ったんだ。
「ヤオ、ついたよ」
「……あれ?」
声をかけられ、我に返ったわたしはすっとんきょうな声を上げてしまう。
いつのまにかハギくんが立ち止まっていて、そのさきに広がっていたのは渡り廊下だったから。
文系の校舎と理系の校舎をむすぶ通路がそこにはあった。