キス、涙々。
その瞬間、ドッと人体からしちゃいけないような音がきこえた気がした。
もちろんわたしの体内から。
あわさったおでこから熱がじわじわと広がって、全身に毒が回るようだった。
毒、まさに言い得て妙だ。
わたしにとってハギくんは毒なんだ。
いつだって、どんなときだって予測不能のことをしてくる危険な存在。
「ねぇましろ。なんとか言ったらどうなの?」
「なまえ、しってたの……?」
「そこかよ」
ほんとうはもっと他にもあったけど、いまはこれだけでせいいっぱいだった。
むしろ、“ヤオ”が名前だと思っている節もあったのに。
「八尾ましろ、でしょ?知ってるよ。だって……」
「だって?」
「……、今日。朝も呼んだじゃん」
たしかにそのとおりだ。
すぐ赤くなるのにましろって、おかしいねって言われたはず。