キス、涙々。
毒ってほんとに恐ろしい。
さっきまでは普通だと思っていた身体が、一気に自由きかなくなる。
ハギくんは一瞬だけわたしから目をそらしたけど。
つかまれていたネクタイも、あわさっていたおでこも離れていったけど。
ふたたび重なった視線だけは、わたしを捕らえて離さなかった。
涙の伝うほおに手を添えられて、くすりとハギくんはわらった。
「あー可愛いね、ヤオ。ほんっとに可愛い」
いや、くすりじゃない。
ぜんぜんくすりじゃない!
めっちゃ興奮してる顔だよ、たすけてお母さん!!
この教室にくる前、“どきり”と感じたのは本能だったんだ。
わたしのなかの何かが、ひとりで帰ったほうが安全だよ!って忠告していたんだ。