キス、涙々。
人見知りのわたしに話題のストックはない。
天気の話はさっきしてしまったし、いまは共通の話題である委員の話。
服装指導はみんなそれなりに苦労しているのかと思ったけど、話を聞くかぎりどうやらそうでもないらしい。
「いや、女子のほうはホント大変そうだなって思うよ」
「やっぱりそうだよね。みんなおしゃれしたいもんね」
「とくに八尾ちゃんが担当のときはなんか、みんなちょっと当たり強い気がするし」
「あっ、そっち……」
嫌われているのはわかっているけど、あらためて言われてしまうと心にくるものがある。
寝起きに右ストレートをくらった気分だった。
それにわたしだって、治せるものなら治したい。
わたしが泣き虫じゃなくなったら、ハギくんにからかわれることだってなくなるだろうし。
それでも泣かないようにしなきゃって思うほど、涙が出ちゃうんだ。
「がんばって治さなきゃ……水分とりすぎてるのかなぁ」
「俺はそのままでもいいと思うけどね」
「え?」
「んーなんでもない」