キス、涙々。
バインダーから顔をあげたわたしと入れ替わるように視線を落とすから、首をかしげていたときだった。
「やあやあ、諸君。やってるかね?」
校舎のほうから聞こえてくる声に、わたしはまるで猫みたいにぴくりと反応した。
この声は会長だ。
「美晴ちゃん!」
「やーん朝イチのましろも可愛いねぇ」
振り返った先にいたふたりの人物。
そのうちのひとりが、美晴ちゃんで。
なにを隠そうわたしの友人、檜垣 美晴ちゃんはわが校の生徒会長だった。
今期からなのに、カリスマ性も人望もある美晴ちゃんはすでにうちの顔で。
生徒も先生も、老若男女、みんな美晴ちゃんのことがすき。
そんな会長を支えるのが、となりにいる彼だった。
「……おい檜垣。あんまふざけてんなよ」