キス、涙々。
そのうち生徒の姿がぽつぽつと見えはじめ、服装指導がはじまった。
たまに男子がくることもあるけど、基本的には同性同士の指導。
わたしは端のほうであいかわらず悪戦苦闘していた。
……うーん、どうするべきか。
「まだ?早くしてくれない」
「ご、ごめんなさい。……あの、これどうしたんですか?」
「どれ」
「えっとですね、この耳の絆創膏……」
「あ、これ?今朝コテで髪巻いてたら火傷しちゃったんだよねー」
やっぱり予想どおりの答えが返ってきた。
わたしの前にいる女の子は、きれいに巻かれた髪をくるくると弄んでいる。
その両耳の端には絆創膏がつけられていた、んだけど。
火傷というのはたぶん嘘だった。
だってさすがに同級生、話したことはないけどそういう情報もすこしは耳に入ってくる。
それにずっと風紀委員をしていれば、なんとなくでわかってくることもあった。