キス、涙々。


それでも美晴ちゃんは助けてくれない。


それどころか、周りにはわたしたち3人しかいないのだ。


ふたりの視線をさえぎるように手をあげる。




「あの、お取り込み中すみません……!」



ハギくんはなにかを勘違いしてる。

その誤解を解かなくちゃいけないと思った。




「加賀屋くんはなにも悪くないの」

「……その涙と副会長は関係ないってこと?」



“副会長”

すこし嫌みっぽくもとれる言い方をしたハギくんにひやっとしながらも、うなずこうとした。





「そうだよ。関係な……」



そこまで言って、止まる。

そして加賀屋くんのほうを見た。




「こっち見んなよ」





……関係なくは、ないんだよね。


加賀屋くんに嫌われてない、ということに安心して泣いちゃった……から。たぶん。


悪いことではないにしても、おそらくこの状況ではそれを言わないほうがいいような気がする。


< 56 / 253 >

この作品をシェア

pagetop