キス、涙々。
「あー……ごめん、加賀屋。疑って」
素直に謝るハギくんを、加賀屋くんはじっと見つめていた。
そして手を伸ばしたから、てっきり和解の握手でもするのかと思った。
たぶんハギくんもそう思ったんだろう。
すこし戸惑ったあと、手を差しだそうとしたけれど。
「さくら。お前、ネクタイ締めろ。何回言ったらわかんだよ」
きゅっと締めたのは。
手をかけたのは、ハギくんのネクタイで。
ぴくりとハギくんの笑顔が引きつったのがわたしでもわかった。
「やっぱ俺あんた嫌いだ。クソ副会長」
「お前がちゃんとすれば済む話だろーが。クソ不良」
あ、あれ?
もしかしなくても、最初からあまり仲がよろしくなかった……?
もはやわたしは蚊帳の外。
ぎゃんぎゃんと言い合いをするふたりを前に、わたしは考えることをやめた。
……なんでもいいからはやく校舎に入りたい。
と、風から身を守るように首を縮こめる。