キス、涙々。
「え、ちがうの?わたしのポポロくん持ってったんじゃ……?」
「ポポ……?いや、それ俺じゃない」
取り合いになった挙げ句、力負けしてポポロくんのスコップを持ち帰っちゃった子じゃないの?
ぼろ泣きして取り返そうとして、結局迷子になっておまわりさんに保護されたときの話じゃないの……?
当時のことを説明している間、加賀屋くんはずっと爆笑していた。
ハギくんはというと、黙って聞いていたかと思えばこんなことを言う。
「そいつの名前覚えてないの?」
「いや、覚えてないよ。ハギくんと間違えたくらいだし、会ったのはそれっきりだし」
「ふぅん、命拾いしたね」
「……?そうだね。あのときはすごく悲しかったけど、スコップひとつですんでよかったのかも」
それでも買ってもらったばかりだったから、なくしたって言ったらお母さんに怒られたっけ。
しかもプチ行方不明になったものだから余計だ。
たぶんあのときのお母さんの怒りは、スコップのことなんかより後者がほとんどだったんだろう。
今となっては笑い話だけど、
心配しただろってあのお母さんがわんわん泣くものだから、わたしも一緒になって泣いちゃったんだよね。
懐かしいなあ。