キス、涙々。
放課後になれば体調は悪化……ということもなく。
とくに風邪の兆候もみられなかったけど、大事を取って寄り道せずに帰ることにした。
もとより、寄り道できる友達なんていないんだけど。
生徒会長の美晴ちゃんの放課後はほとんど空いてないといってもいい。
今日もなにやら忙しそうに、さささっと教室を出ていった。
「ねえねえ!今日って空いてるー?」
「えっ?」
ひとり黙々と荷物をまとめているとき。
自分に声がかかったのかと思って、振り返ってしまったが最後。
「え……なに?八尾さんに言ったわけじゃないよ」
ちょっと引き気味にそう言われたあと、クラスメイトの女の子は横を通り過ぎていった。
穴があったら入りたい、ってこのことを言うんだ。絶対。
恥ずかしさやら虚しさやら、複雑な気持ちになりながら帰る準備を再開する。