キス、涙々。



「進学は本当に諦めるのか?」


その声は部屋の前から聞こえていた。

朝におこなった服装指導のチェックシート。


それを提出し忘れていたから、中央棟にある生徒指導室に寄ったんだけど……

生徒指導の蒲池先生、誰かと話してるみたい。




「諦めるもなに……元から進学…つもり…いですよ」


曲がり角の先から聞こえる声は、すこし聞き取りにくい。

それとは別に、話している生徒の声も低くてちいさかった。




「なあ、もういちど親御さんとしっかり話し合ってみたらどうだ?もし難しそうなら、俺も一緒にいってやるから」



進路のことで悩んでるのかな。


言葉の端々から推測するに、どうやらそういう相談らしかった。


そこでふと、無意識に盗み聞きしていることに気づく。



デリケートな問題だから、きっと聞かれたくないよね。


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