キス、涙々。
もうすこし離れたところで待っていよう。
そう思って、踵を返そうとしたときだった。
「話し合いでどうにかなるなら、とっくにやってるよ」
苦しそうな声。喉の奥から絞り出すような声に、どくんと胸が跳ねる。
「これ以上、かぞ…を壊したく……んです。俺は大丈……ですから、放……ください」
そうして近づいてくる足音。
「おいっ……」
あわてて物陰に隠れたと同時に、蒲池先生の声が追いかけてくる。
「──────萩!」
それは、予想だにしていなかった名前だった。