キス、涙々。


「八尾はたしか、就職だったよな?」

「え?いえ、進学しようと思ってて」

「ああ、そうか。そういえばそうだったな」



わたしの印象ってどれくらい薄いんだろう。

でも、それに抜きにしても先生は心ここにあらずといったようで。


先生と別れたあと、わたしはすぐにハギくんのあとを追った。

まだそんなに遠くまで行ってないはず。

案の定、ハギくんはちょうど正門をくぐるところだった。




「ハギくーん!」

「っ、え、あ……ヤオ?」



走りながら、その後ろ姿に声をかける。

振り返ったハギくんは、まさかわたしだとは思わなかったんだろう。


あっけにとられて立ち止まったのを好機に、わたしはもういちど声をはった。








「猫かパフェ、どっち吸いたいー!?」


「…………は?」



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