キス、涙々。
「あはは……あーあ、でもよかったぁ」
わたしが急に笑ったからか、本当に頭がおかしくなったと思われたらしい。
なにが?と言いたげなハギくんの訝しむ視線。
「ハギくんはやっぱり笑ってるほうがいいね」
さっき、蒲池先生と話しているときは声しかわからなかったけど。
とても楽しそうな声には聞こえなかった。
「……ヤオ、もしかしてさっきの聞いてた?」
「え、なに?誰かとわたしの悪口でも言ってたの?」
「いや……うん、そう。加賀屋とね」
「……酷いなぁ」
もちろんそれが嘘だってわかってた。
それでも追求したりすることはしない。
誰だって触れられたくない部分はある。
ハギくんにとってのそれは、“進路”のことなんだろう。