キス、涙々。
「そういえばバイトって何時から?まだ時間あるの?」
「ある。17時から」
「あと30分!!」
ある、じゃないよハギくん。
なにをもってそんな朗らかな笑顔でいれるの。
ゆっくり歩いてるからてっきり余裕なのかと思ってた。
「はやくいこう。遅れちゃうよ」
「なんでヤオが焦ってんの」
「ハギくんが急がないからだよ!」
それでもハギくんの歩く速度はあがらない。
むしろさっきよりもペースダウンする。
反抗期の子どもですか?
この天邪鬼!
もどかしくなってハギくんの手を取れば、一瞬驚いたような顔をされた。
そのまま駅まで走ろうとしたけど……
──────ぐんっ
逆に身体が引っぱられたのは、とうとうハギくんが足を止めてしまったから。
あ、あぶな……転けそうになった。
コントみたいな転け方をしなかったことに、とりあえずほっとする。