キス、涙々。


目を覚ましたのは階下で話し声がしたから。



お母さんかな……いや、もうひとり、誰かの声がする。

いま何時かもわからなくて、時計を見上げるのも億劫だった。


なぜかうつ伏せの状態のだったわたしは、無意識に耳をすませる。




「……いつも、────…なってます。ましろさんの………」


「ええ、いま上で……れば、──…ってくれる?」


「じゃあ……少……だけ」



やっぱり誰か来ている。

男の人の声っぽいけど、一体誰だろう。


思考が弱まっていたわたしは、それ以上あたまを働かせられなくて。

ふたたび眠りにつこうとした。






──────


「うわ……ヤオ?」


「んぅ、おかーさ……?寒いから、はやく閉め……」


部屋は暖房をつけていて、ずっと扉をあけられていると冷気が流れ込んでくる。


ぶるる、と身震いをしながら身体をまるめた。


< 84 / 253 >

この作品をシェア

pagetop