キス、涙々。
カメ、醒々。
……あ、そういえばもうすぐアレの時期だ。
一ヶ月後にひかえているその行事を思い出したのは、となりにいる加賀屋くんをぼうっと見ていたときだった。
いつからわたしの視線に気づいていたのか、煩わしそうな表情をあらわにして睨まれる。
「なんだ人の顔をじろじろと」
「あ、ごめんね。文化祭の季節だなと思って」
「文化祭?……ああ、たしかに」
なんで加賀屋くんが嫌そうに顔を歪めたのか、わたしはなんとなく察しがついていた。
「生徒会、大変そう?」
「言うまでもなくな」
「だよね」
そう。
生徒会がいそがしいのはいつものこと。
でも、文化祭での仕事量はいつもの比じゃないということをこの学校の生徒なら誰でも知っている。
生徒会への立候補が少ない要因の多くはきっとこの時期の忙しさにある、とわたしは睨んでいた。
「とくに会長の美晴ちゃんと副会長の加賀屋くんの仕事量は尋常じゃない、とかなんとか」
「去年の会長はストレスで胃に穴が空いたらしい」
「ああ……覚えてる覚えてる」