キス、涙々。
しかも、どうやって断ったのかも思い出せないんだ。
その3年生の先輩に恥ずかしい思いをさせてしまったことはたしかだった。
悪い人じゃなかった。
だから余計に申し訳なくて、心苦しさは残ったまま。
「だから、今年は出ないことにしたの」
「出ない?そんなんできんの」
「実行委員の人に話しておけばね、外してくれるんだ」
「へーじゃあ俺も外してもらうか」
「え、でも加賀屋くんは……」
出たほうが盛り上がるんじゃないかな、という言葉をすんでの所でのみ込む。
盛り上がる盛り上がらないの話じゃないよね。
本人にとってはそういう問題じゃない、から。
ヘタなことは言えなかった。
「俺は?」
「……加賀屋くんは笑ったら可愛いよね」
「は?」
言ったあとでしまったと口を押さえる。
なにか違うことを言わなきゃって、つい前から思ってたことを口走っちゃった。