箱崎桃にはヒミツがある
あいつ、時間間違えたり、遅れてきたりしないだろうかな、と思いながら、貢は日本庭園で家族とともに桃を待っていた。
数寄屋造りの料亭の近くだ。
すると、歩いてこちらに来る人たちが、みんな後ろを振り返っているのに気がついた。
なんだ? と見ると、淡いピンクで、さらさらした素材のワンピースを着た桃が歩いてくるところだった。
いつもは、お前、ほんとうにモデルなのか? と問いたくなるくらい、間の抜けた盗人歩きをしていたりする桃だが。
今日は見合いという正式な場だからか。
ショーのときと同じように颯爽と歩いてきていた。
ワンピースの素材のせいか、桃の脚の形の良さがワンピースの上からでもよくわかる。
「箱崎桃よっ」
「CMで見るより、実物の方が綺麗ねえ」
と周りの女性客たちが小声で話しながら、桃を振り返り見ていた。
その様子を見た貢の父、範夫は青ざめて言ってきた。
「もう駄目だ……」
なにがだ。