箱崎桃にはヒミツがある
 透視するように店の奥にあるデザートの棚を見ていると、その手前にある雑誌コーナーにいた男の人がそそくさと逃げていった。

 ……す、すみません。
 あなたを睨んでたわけではありません、と申し訳なく思ったとき、

「なにやってるんだ、箱崎桃」
と背後から声がした。

 貢が立っていた。

「あ、こんばんは、先生。
 いや……チョコ系のデザートが食べたくて。

 いけませんね、コンビニって。
 こんな時間にも開いてるから」

「……ベリーヒルズビレッジの中の方が店がたくさんあるだろう」
と言う貢に、

「その誘惑から逃げて外に出たんですけどね」
と苦笑いして言う。

「どうでもいいが、こんな時間に女性一人でランニングは物騒だろう」

「あ、防犯ブザーとスマホとスタンガン持ってるんで」

「……俺に向けるな」

 見合い相手を退治するなよ、と桃が取り出したスタンガンの先端を見て貢は言う。
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