箱崎桃にはヒミツがある
 あ、そうだ、あった、と桃はガサガサと鞄からチケットを取り出してくる。

「そういえば、今回はお母さんが来られないって言ってたんですよ。
 指定席なんで、うちのお父さんの隣になりますけど。

 今週末です。
 よろしかったらどうぞ」
と渡して、

「……箱崎さんが来られるのか。
 歯医者でお前と会い、ショーでお前の父親と会い。

 最早、見合いする意味がわからないんだが……」

 それでも決行されるんだろうな、と貢は諦め気味に呟いていた。

「そうですね。
 でも、一度くらい見合いしないと、うちも風当たり強いので。

 ちょっとお付き合いいただけたら嬉しいです」
と桃は苦笑いしながら貢に言う。

 たぶん、この見合いを断ったら、また別の誰かと見合いさせられるんだろう。

 だったら、すでに知ってるこの人の方がいいかな、と思ったからだ。
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