極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「藤原って……兄弟いる?」
北條さんが不意に箸を止めて、私を見る。
「はい。兄がいます。私と違って出来がいい兄です」
そう。私には三歳年上の兄がいる。
優しくて頭も良くて、いつも私を守ってくれた。
兄は今、有名大学の准教授をしている。
「藤原さんだって優秀だよ」
滝川さんが褒めてくれたが、小さく笑って否定した。
「兄に比べたら全然ですよ。ここ、ラーメンも餃子も美味しいですね」
子供の頃のことを思い出し、少し胸が痛む。
笑って話を逸らし、それ以上プライベートの話はしなかった。
食事を終え、会計をしようとしたら部長が私の分まで払ってくれて焦った。
「あの、これ私の分です」
千円札を財布から抜いて北條さんに差し出すも断られる。
「いらない。俺が誘ったから」
「でも……」
千円札を握ったままま困惑する私の肩を滝川さんがにこやかに叩いた。
「俺も奢ってもらったし、素直にご馳走になれば?ラーメン奢ったくらいで北條は破産しないって」
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