極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「そんな寂しそうな顔するなよ。お前のことを頼みたくて優を呼んだんだ」
兄の意図がイマイチわからずメニューを持ったままキョトンとする。
「私のことを頼む?」
「お前、俺しか頼れないだろ?でも、イギリスに行ったら何かあってもすぐに駆けつけてやれないからさ」
実は私の両親は離婚していて、父も母も再婚してそれぞれ別の家庭を持っている。
離婚の原因は父の浮気。
母にも恋人が出来たこともあって、中学くらいからほぼ兄とふたり暮らしの生活をしていた。それからは、兄が私の保護者だったんだ。
私がアパートを借りる時も兄は保証人になってくれた。
でも、私ももう子供じゃない。
二十七歳の大人だ。
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。ひとりでちゃんとやっていけるから」
「まあまあ、そうムキになるな。兄ちゃんの自己満足だよ。優に任せておけば安心してイギリス行けるからさあ」
兄は自分が悪いみたいな言い方をしているが、多分私のことがすごく気がかりなんだと思う。
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