極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
今までどれだけ兄の存在に助けられたか。
兄は時には優しい父でもあった。
「……お兄ちゃん」
少し涙ぐむも、兄の次の発言で涙が一気に引っ込んだ。
「ってことで、ふたりとも連絡先交換しといて」
「あっ、会社に行けば、部長の公用携帯の番号わかるから」
慌てて断ろうとしたが、私と兄のやり取りをずっと静観していた北條さんが口を挟んだ。
「登録してなきゃ意味がない。ほら、スマホ出せ」
上司に命令されては仕方がない。
「……はい」
バッグからゆっくりとスマホを取り出す私を見て北條さんはボソッと言った。
「……嫌そうだな」
「いえ……その……部長に迷惑をかけたくなくて」
出来れば仕事以外であまり接したくない。
だって、北條さんのファンに睨まれるもの。
本音は口にせず、そう言い訳したら彼は穏やかな声で告げた。
「親友の大事な妹だ。迷惑だなんて思わない。俺を本当の兄と思えばいい」
それはかなり無理があるんですけど。
血も繋がってないし、おまけに上司ですよ。
多分、実際に頼ることはないだろう。
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