極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
ここで俺に会うのはマズイという顔をしている。
「専務に呼ばれてちょっとね。佐藤課長は?」
少し威圧的に問えば、佐藤課長はしどろもどろになった。
「私は……あの……その……以前いただいた香典のお礼を」
香典って最近身内が亡くなった話は耳にしていないがな。
「そうか。お礼は大事だが、自分の職務を忘れないように」
彼を見据えて少し釘を刺すと、彼の目が泳いだ。
滝川の話では、佐藤課長は専務に頼まれて中国の高官の接待をアレンジしているとか。
ホント、自分の部下の面倒をろくに見ず、点数稼ぎに忙しい奴だ。
専務室の前ということであまりくどくど言わず、この場を去る。
彼はうちの部にはいらない人間。
そう判断して十月の人事で他の部署に異動してもらおうとしたのだが、専務に反対された。
まあ、四月にアメリカから戻ってきたばかりだから引いたが、このまま食い下がる俺ではない。
剛田専務は最近不審な動きをしていて、海外のライバル企業の幹部と頻繁に会っていて、うちの機密情報を流しているらしい。
< 86 / 243 >

この作品をシェア

pagetop