極上御曹司に初めてを捧ぐ～今夜も君を手放せない～

俺がカタログの発送を手伝った夜、男性の靴音が聞こえたし、梨乃がひとりで残業していた夜も靴音が聞こえて怖いというような発言をしていた。
その靴音の主は課長ではないかと思っている。
梨乃のことがよく視界に入るようになってから、佐藤課長の視線も気になるようになった。
彼はよく梨乃を見ている。
杞憂であればいいが、課長が何か良からぬことを考えているような気がして、滝川に彼の行動を見張るよう頼んでいたのだ。
その後、取引先の幹部と食事をして午後十一時過ぎに自宅マンションに戻るが、玄関にパンプスが置いてあるのを見ると今はひとり暮らしじゃないんだと実感する。
リビングの灯りがついているが、家の中は静か。
このパンプスがなければ電気をつけたまま家を出たのかと思うだろう。
梨乃は読書でもしているのだろうか？
正直、彼女が親友の妹と知った時は驚いた。
目とか亮太にそっくりなのに、今まで気づかなかったのが不思議なくらいだ。