極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
それは梨乃も同じだろう。
帰る実家がふたりにはない。
だから、毎年正月はふたりで過ごすと亮太が話していた。
『梨乃が大晦日の夕方からうちに来て年越しそば作ってくれて、で、紅白とゆく年くる年観てだらだら過ごす。元日の朝は梨乃の作ったおせち食べて、これがうまいんだ』
仲のいい兄妹で羨ましい。
そう言えば、高校時代、亮太の弁当を作っていたのは梨乃だった。
『今日も妹が朝五時に起きてキャラ弁作ってくれた』と満面の笑みを浮かべて言う親友は本当に嬉しそうで、毎日その弁当を見せてくれた。
高校生でキャラ弁というのは、恥ずかしいもの。
でも、亮太の弁当はクオリティが高くて、クラスのみんな羨ましがっていた。
可愛いネコ、犬、サルといった動物ものが多かったが、いつも一言添えてあってそれを見て亮太が顔をくしゃくしゃにして笑っていたのを覚えている。
【全部食べてね】とか【ガンバレ】という文字が海苔で書かれていたのを見て、『優しい妹だな』と亮太に言うと、彼は自慢げに返した。
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