Zircan

「うん、それがいいよ」

と、先程リオの後押しをしたサミュアだが、元気がなさそうだった
今日だけではなく最近ずっと同じような調子で、サミュアは不安を感じている

貴族の宝を奪い始めて何回目か経った時だった
初めは幼い頃からの仲であるこの仲間たちとやって行くことが楽しくて、どんなことが起きても毎日がドキドキの連続だった
でもある時、他のみんなとの差を感じてしまった
宝を奪って活動しているから政府が捕まえようとしてくるのは当然だ
だがみんなが戦いをしているのを見て、自分とは遥かに違う圧倒的な強さがあることに差を感じる
また敵を攻撃し、敵や味方が傷つき、血を流しているところを見るとどうしても足が竦んで動けなかった
助けに行きたくても足が地面に張り付けられたように動かせない
そのせいで余計に仲間が傷つくこともあり、自信を無くしてしまった
みんなみたいに戦うことが楽しいとは思わない
だが一緒にいたいという気持ちは強かった

そんなある日、サミュアはリオに聞いた

「私はジルカンに必要かな?」
「・・・どうしたんだ?」
「やっ、やっぱりなんでもない。ごめんね急にこんなこと聞いて」
「なんだよ、そんなもん必要に決まってんだろサミュアがいないだけでチームの崩壊があるかもしれないぞ。それに一番年下がそんなこと考えるのは早いぞ」

優しいリオはそう言った
リオだったからそう言ったのかもしれない
リオが優しいから
サミュアだけでなくいろんな人に優しい
他のみんながどう思ってるかまではわからない
そうだとしても、その時は必要だと言ってもらえることが嬉しかったからかやる気が出ていた
だが、いざ争いになってしまうと足を引っ張ってしまう
そんな自分がサミュア自身許せないでいた
足を引っ張っているという事実がある限り
だから正直に言ってしまうとあまり乗り気ではなかったと思う
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