千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
「…タロくん…?」

急に視界が戻ったように曇っていたピントが合うような感覚…。
ハッッ…
慌てて辺りを確認すると、千歌夏様はさっきと同じように机に向かいながら私を心配そうに見上げていた。
「…え…あっと…」
さっきのは、夢…?妄想なのか?

「…タロくん、体調悪いの?何度呼んでも反応がなかったのよ?…大丈夫?」

お嬢様が…泣いてない…
よかった…私は、なんてことをしようと…
現実でなくて良かった…。

「申し訳ございませんでした…お嬢様…」

「そんな、真剣に謝らなくても大丈夫よ。」
そう言って可愛らしい表情で私を見つめてくれていた。

天使のように汚れがなく美しい…お嬢様…
本当に…汚してはいけない人だ…

「タロくんが教えてくれた通りに公式に当てはめて解きました。」

私に、得意気にノートを広げてみせてくれる。

「どれどれ…千歌夏様…申し訳ございません。間違っています。」

「えっ!本当に?」

そう言って何も警戒せず、私に近づいてくる…。
それだけの事なのに、胸がいっぱいになる。
何があってもあなたを泣かせてはならない。
例え、誰を好きであろうと…あなたのそばをはなれません。
なぜなら…
私はあなたの専属執事なのですから…。

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