千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
千歌夏様…あなたにだけです。
「…タロくん?」
「はい…千歌夏様」
そう言って返事をするタロくんは、私の2メートル先にいる。
朝の支度…タロくんは私の髪をいつものように綺麗にリボンを入れながら編み込んだ後…鏡に映る私の顔に微笑んでくれる…
それなのに…最近のタロくんは…逃げるように私から離れていく。
「最近…へんじゃない?」
もしかして…私…何かしたのかしら…
「いえ…」
タロくんは、遠くから返事をするだけだった。
タロくん…
タロ…くん
こんなの…絶対…変だわ。

登校中の車の中でもタロくんは、私と必要以上には話しをしない。

「………………タロくん」

私はか細く消えそうな声で彼の名を呟いた。

そして…確信にも似た感情が湧いてる。
私…………タロくんに嫌われたんだわ。
私の頭の中に絶望が溢れてくる。

「…北條…?」

下駄箱で固まっている私をタロくんが仕方なく呼んでいる。
…………きっと…面倒くさいと思われているわ。

「…タロくん…先に行って…」

「…え、どうしました?」

「何でもないの…ちょっと…一人にして」

「…お嬢…あ、北條…大丈夫ですか?」

「うん…大丈夫…」

タロくんは、心配そうな表情でその場を立ち去った…。

はぁ…耐えたわ…でも…
私、これからどうしたらいいのかしら…
タロくんから嫌われたなんて…
どうしたら…

その時…

ガシッ!

「えっ!?北條…どうした?!」

急に私の腕を掴まれたかと思うと…
彼の方に引き寄せられる…。
え…?何…?
見上げると、私の顔を驚いたように見つめる顔がある。

「…あ、入江くん…」

金髪が眩しい…

「何で…?」

「何でって…そんな顔して…」

「…え…顔…」

顔に手をやると…私の目から大粒の涙が溢れて止まらなくなっていた。
ヤダ…こんなみっともない顔…
慌てて手で瞼を擦りつける…

「あ…バカ…そんな事したら…」

そう言うと、彼は私の手首を掴んでもう片方の手で、私の涙を拭ってくれた。

「…あ…ごめんなさい…私…大丈夫なので…」

「大丈夫なやつが、泣かないだろ?」

「…う…そうなんですが…」

入江くんは、フッと笑顔になり、私の顔を見つめている。

「…あの、腕を離して頂けると助かります…」

「あ、悪い…やっぱ…すごい綺麗だな。」

そう言った入江くんは、私の腕をゆっくり離そう緩めたが再びギュッッ…と強く握りしめられた。
え…
入江くん?彼は真剣な顔がで私を見ていた。
私も首を少し傾げながら彼を見ていた。
その瞬間…
バッッ!
入江くんの腕を振り払うように誰かの手が割って入った。

「…タロ…くんっ」

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