千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
…誰…
知らない人みたい…

「…お嬢様、着きました」

私は屋上につれてこられた。

「…え、何…タロくん?屋上で…」

振り返った瞬間…シュル…
私の長い髪が風になびいた。いつもタロくんが綺麗にリボンと一緒に編み込んでくれた髪…。

「え…?え?何で?」

私はほどかれた自分の髪を触りながらわけがわからない気持ちでタロくんを見つめた。

「…お嬢様…私はお嬢様の執事です。これから先もずっとずっと…この命尽きるまで千歌夏様…」

「あなたにだけです…あなたのためだけに生きます…」

そう言ってタロくんは、優しく笑っている。

「…タロくん」

私の頬に涙がつたっていく…
そばにいてくれるのね…それなら、もう何もいらないわ…これ以上…何も
何かを望んだら…いけない。
私がそう思って、タロくんの顔を笑いながら見つめた。

「ですが…」

そう言って、彼が私の目の前に近づいてくる。
…ち、近…い
タロくんが私の数センチ先に…
ドキ…ドキ…
何で…胸が…騒がしくなっていくのかしら…
タロくんに聞こえてしまわないかしら…
サラッ…
え…
タロくんが私の髪を手に取ると彼の唇でキスをする。
カァー…顔が…熱くなっていくのがわかる。

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