呪イノ少女、鬼ノ少女
序ノ口
波崎澪がその地に降り立ったのは、夕暮れにそろそろと夜気が浸み出すころだった。
額に滲んだ汗を拭う。
近年稀にみる炎暑続きの夏もようやく盛りを過ぎはしたものの、夕刻のこの時間でさえ肌はじりじりと焼かれている。
くたびれ寂れた無人の改札を出て、眼前に広がる景色を目の上に手を置いてぐるりと見渡した。
駅前の商店街がぼんやり朱色に染め上がっている。
膨れ上がったキャリーバッグを掲示板の前に立て、長時間の電車移動で疲れた体を軽く伸ばした。
「こんなに長く電車に揺られたのは久しぶり…」
それにしても、と一息ついたところで思う。
都会育ちの澪には、ここの景色は珍しかった。
個人経営のこじんまりとした商店が立ち並び、帰宅の時間帯にもかかわらず人影は数えるほど。
―――とんでもない田舎だ。
別段、日本の各地、どこでも見られるような光景だが、多くの人間が蠢く都会からほとんど出たことのない澪には信じられない光景だった。
額に滲んだ汗を拭う。
近年稀にみる炎暑続きの夏もようやく盛りを過ぎはしたものの、夕刻のこの時間でさえ肌はじりじりと焼かれている。
くたびれ寂れた無人の改札を出て、眼前に広がる景色を目の上に手を置いてぐるりと見渡した。
駅前の商店街がぼんやり朱色に染め上がっている。
膨れ上がったキャリーバッグを掲示板の前に立て、長時間の電車移動で疲れた体を軽く伸ばした。
「こんなに長く電車に揺られたのは久しぶり…」
それにしても、と一息ついたところで思う。
都会育ちの澪には、ここの景色は珍しかった。
個人経営のこじんまりとした商店が立ち並び、帰宅の時間帯にもかかわらず人影は数えるほど。
―――とんでもない田舎だ。
別段、日本の各地、どこでも見られるような光景だが、多くの人間が蠢く都会からほとんど出たことのない澪には信じられない光景だった。