呪イノ少女、鬼ノ少女
「おいしくなーいっ!」


そう不満気に茶碗を叩き付けたのは茜だった。

原因は、夕飯だというのに、左右の二人が黙りこくったままで団欒が無い事。

茜は澪と雛子の沈痛な面持ちを眺めて、忿懣やる方ないと握った箸を米に突き刺した。


しかし、


「母さん、行儀悪い…」


雛子はぼそっと注意を促すだけ。

普段なら反射で説教を始める雛子が、怒りもしない。


そんな雛子に毒気を抜かれてしまったのか、茜は素直に箸を取り直し、しゅんと肩を落とした。


「うぅ、こんなの胃もたれ起こしそうだわ」


そんな泣き言を言って、茜はぼそぼそと米を口に運ぶ。

ちなみに胃もたれなどと言いながら、既におかわりは三度目。


そんな茜に対して、澪と雛子は、どうにも食が進まないようだった。

二人共、目の前の焼き魚には手を出さず、米も二、三口食べただけだ。


それが、茜を滅入らせている一番の原因だった。

会話が無いだけならまだ良かった。

しかし食欲まで無くされては、一人で食べるよりもずっとずっと淋しい心地なのだ。
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