呪イノ少女、鬼ノ少女
翌朝。

まだ朝靄も晴れぬ早朝から、澪は茜の部屋の前の廊下をウロウロとしていた。

障子の前で立ち止まり、声を掛けようか悩んでは、部屋の前を離れ、又戻ってきては同じことを繰り返している。


「はぁ…」


昨夜のことを謝りに来たのだが、どうにも踏ん切りがつかなかった。


確かに、昨夜は言い過ぎたと思う。

落ち着いてみれば、茜のことなど何ら慮る事無く意見をぶつけてしまった。

茜にだって、きっと何か考えがあるに違いない。

だから、雛子に対してああいう態度を取っているのだろう。


澪は確かに謝らなければならない。

相手を想わず、自身の意見を押し付けてしまったのだから。


だが、それでも茜の態度に納得がいかない。

澪には、許せない。

だから、澪は珍しくも食い付いたのだ。

そうして、今ここでこうして部屋の前で、どうしたものか悩んでいるという訳である。


「うう、気まずい」


何度目かの嘆息を漏らす。

いつまでも、こうしてはいられない。

そのうち、茜も起きだして来て鉢合わせてしまう。

そうなる前に、腹を括らなければならない。


ともう一度、嘆息しようとした時、部屋の中から声が掛かった。


「入っていらっしゃいな、澪ちゃん」

「あ、茜さん…」
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