呪イノ少女、鬼ノ少女
障子を開いて、恐る恐る中を覗く。

未だ布団の中で、すこし寝癖のついた髪を手櫛で梳いている茜がいた。

普段は一つに纏められている豊かな髪が、線の細い体の上を柔らかに流れている。

その普段とは違う彼女の艶やかさに、ドキリとした。


「おはよ」


雰囲気は違っても、相変わらずの気の抜けるような挨拶に、澪は少しだけ安堵する。


「お、おはようございます」


澪も挨拶を返し、茜の布団の隣に腰を下ろした。

体を小さくして、正座を作る。

だが、きっちりと居住まいは正しても、視線はふらふらと部屋の中を飛び回っている。

やはり、気まずい。

なんと切り出したものだろうか、そう考えていると、また茜の方から声を掛けてきた。


「澪ちゃんは相変わらず早起きなのねー。こんなに朝早くから、どうしたの?」

「あ…その、あの、昨夜の事なんですけど」


茜からは視線を逸らし、ボソボソと話す。


「ああ、そんな事。いいのよ、気にしなくてもー」


茜は、昨夜の事等少しも気に掛けていないとばかり、澪の頭をグシャグシャと撫で回して、無邪気に笑った。

そんな彼女の様子に、澪は幾らか呆けてしまった。

が、いけないと頭を振って、もう一度深く頭を下げる。


「私、茜さんに失礼な事ばかり…」

「だから、いいのよ。昨日は私が大人気なかっただけだから」

「え?」

「昨日はちょーっと嫌な事があって、澪ちゃんに八当たりしちゃったのよ。だから、謝らなきゃいけないのは私の方。ごめんなさいねー、澪ちゃん」

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