呪イノ少女、鬼ノ少女
さも当然のように雛子は言うが、確かに伝承の結末としては中途半端だ。

それでは、澪も納得がいかない。


「終わりって、その後どうなったの?」


よくある昔話や言い伝えなら退治して、村はハッピーエンドだ。

なのに、ここ物語は「鬼と珠祭は延々と戦い続けました」なんて、そんな救いも悲劇もない終わり方なんて変ではないだろうか。


「さあねー。ご神木に封印されてるんじゃないかな?」

「かなって…そんな!」


がっしりと雛子の肩を掴んで揺すった。

だが揺すったところで、続きが出るわけでもなく、雛子の呻きだけが空しく漏れる。


鬼気迫る、という言葉はまさに今の澪を指した言葉だろう。

気の強い方である雛子も、その剣幕にさすがに怯んでしまった。


「ぐっ、ちょっ…澪さん!落ち、落ち着いてよ。ただの御伽噺なんだから。それに夢の話なんでしょ?」

「でも…」


あれは、夢などではない。

未だに体に灯った恐怖の蒼い炎が少しも薄れないのだから。


「落ち着きなさーい!」


ゴスッ…。

何か硬くて重い衝撃が澪の頭頂部に落ちた。


「痛っ!?」

「大丈夫、澪ちゃん?」


重いものが頭に乗ったまま首を後ろに向けると、茜がプリプリ怒っていた。

頭を捉えた衝撃の正体は、どうやら彼女の持っている鍋だったようだ。

よく煮込まれたカレーの匂いが、いつのまにか部屋いっぱいに広がっていた。



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